Interview with Kazuhiro Inaba

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稲葉和裕インタビュー

   

ムーンシャイナー 2007年4月号より転載








「ブルーグラス・ランブル」100回公演を迎えて

対談:稲葉和裕(ブルーグラス・ランブル主宰)
上田正三(稲葉和裕ファンクラブ事務局長)



上田:―ブルーグラス・ランブル100回記念公演は、どういう企画でやるんですか。

稲葉:4月15日(日)玉造・OCCホール(大阪クリスチャン・センター)で開催されます100回記念公演(午後3時開演)は、ちょうど来日中のロンサム・リバー・バンドのバンジョー奏者、サミー・シーラー、シカゴ在住のギタリスト、マロ・カワバタ、そしてアリシア・ヌージェントのベース奏者、ジェニファー・ストリックランドをゲストに迎えての豪華なライヴになりそうです。4月11日東京・バックインタウン、12日福岡・ドリームボートで共演した後、15日大阪で再び共演します。ブルーグラス・ランブルが第1部、そしてサミー、マロ、ジェニファーと私で、第2部を演奏する予定です。ブルーグラス・ランブルのバンジョー奏者、ランディー・コットンもとても喜んでいます。日本にいながら、ブッチ・ロビンスやマイク・コンプトン、そして、今回はサミーら、トップ・ミュージシャンと演奏できる訳ですから。また、ライヴ終了後(午後5時30分から)は、OCCホールの多目的ホールでささやかな祝賀懇親会を持ちたいと思います。ミュージシャンとファンの皆様との交流の場になればと考えています。

―ところで、ブルーグラス・ランブルを始めたキッカケは何ですか。

8年位前から、「カントリー・ソングを歌って、英語に親しもう」というコンセプトの文化講座を始めました。一般の方々が対象なので、一般的に知られたカントリー・ソングやフォーク、ポピュラーを課題曲として歌い始めました。コンサートもブルーグラス以外のクラシック・カントリー系の曲が中心になってきていました。講座やコンサートをやりながら、そもそも、自分はどこから来たのかを強く考えるようになりました。「稲葉君は仕事のためにカントリーをやっている」とか「もうブルーグラスはやめたの?」というように周りの人に思われたくなかったし、自分でもそうなりたくなかったんです。
質の良いブルーグラスを目指して、また自分のレベルを保つために月1回のペースでライヴをやり始めました。ちょうどその頃から、毎年、お客さんとのツアーでアメリカへ行きだしていて、ナッシュヴィルのブルーグラスのライヴハウスの老舗、ステーション・インのような気軽な雰囲気で、ふらっと寄ったら良いブルーグラスが聴ける環境に憧れました。長く続けることが目的ではありませんでしたが、毎月テーマを考え、曲を替えて続けてきたら、たまたま、100回まで続いたという感じです。結構、早かったですよ。毎回、ライヴに足を運んでくださるファンの方々に本当に感謝しています。
メンバーも8年以上付き合ってくれて有難いですね。初代のバンジョー奏者、向井祐仁さんが代わっただけで、その後メンバーは安定しています。マンドリンと小話で人気の大西一由(マンドリン)、岐阜から新幹線で駆けつけるランディー・コットン(バンジョー)、私と同じで現在まで皆勤を続けている蔦川元(フィドル)、そして、リズムの要、石平祐二(ベース)といったメンバーに支えられています。




―ブルーグラス・ランブルを通して、お客さんに何を伝えたいのですか。

ブルーグラス・ミュージックの良さを一般の方々にも分かっていただきたいことと、ブルーグラスを通してお客さんが集う「コミュニティ」みたいなものを作りたいと思っています。音楽だけじゃなくて、ブルーグラス・ランブルを共通項に、「集い」の一つの場を提供する、そういう存在にしたいですね。人との出会い、触れ合い、温もりといった人間関係の触れ合いの場を創り出せればと思っています。自分たちなりにブルーグラスを追及すると同時に、お客さんに直接語りかけて、僕たちを介して人の輪をつなげていきたいですね。ブルーグラスはついマニアックになり、内へ内へ入り込んでいく傾向があるので、できるだけ一般の方々に発信して、楽しんでいただける環境を作りたいと願っています。

―「風の歌 ブルーグラス」を読んだ時に、「カントリー・ミュージックはスター・ミュージック、ブルーグラスはバンド・ミュージック」と書いてあって、ああなるほどと違いが良く分かった気がしました。その関連で思い出したんですが、ブッチ・ロビンスから「音と音とをぶつけあって、そこで新しい音が出てくる、それがブルーグラスなんだ。」と聞いた時、ブルーグラスの本質が分かったような気がしました。この点で、最近のランブルには少し物足りなさを感じるんですが。

僕も気になっているし、それを感じています。ぶつけ合いになっていない場合が多いかな。結果的にライヴの当日に練習して、その日に終わってしまうから。曲が煮詰め切れてないし、煮詰めてる時間もないのが実情なんですよ。ブッチや昨年のゲスト、マイク・コンプトンらは確かに攻撃的な演奏をしてきますよ。それを受けるだけではなく、さらに反撃するパワーが必要です。そこに音楽的な対話が生まれ、それらが積み重さなって、ブルーグラス・サウンドになるのだと思います。

―今は、各楽器ごとにマイクでひろっていて、ワンマイクでステージの上でぶつかってない感じがするんですよ。

当初、僕達もワンマイクを試みましたが、ワンマイクにすると音のブレンドや視覚的な面でプラスは大きい反面、弾き手のバランスが難しいんです。特にマイクから遠いベースの音量にも問題が出ます。バンドからの音圧が低いと結果的にパワー不足になって、音が出にくく、小さくなって弱くなるというマイナスが生じます。それをカバーする技量が必要になります。お客さんが聴いていて、音量的にしょぼいなあとなれば、全体のインパクトも弱くなってしまいます。ワンマイクは、そのあたりが難しいですね。音が聞こえないとさらに強く弾くようになり、きれいな音が出ず、音が苦しくなります。マイクで各自の楽器をひろうときれいな音が出る。デル・マッカリーもワンマイクじゃないんですよ。ワンマイクぽく見せているけど、正味1本ではやってないんですよ。ワンマイクは大変ですが、それだけ動きが出て、リスナーに喜んでもらったらプラスですし、また聴きたいとなればリピーターになってもらえますから、マイクの使い方を考えて見せる工夫も大いに必要ですね。

―ゲスト・プレーヤーで来日したキース・リトル、ブッチ・ロビンス、マイク・コンプトンとそれぞれ話をしましたが、3人3様ですね。3人にどんな印象を持っていますか。

みんな個性があって面白いですね。僕は、彼らと同等に音楽的に展開できたら一番嬉しいし、そういう状態を作らないといけないと思っています。彼らにはブルーグラス・ランブル以外の日本のミュージシャンとも交流を持ってもらっているので、ここにはこういうプレーヤーがいるとか、各地の雰囲気や気質もわかるので、彼らにとっても興味深い経験だと思います。キースには何度かブルーグラス・ランブルで共演してもらっているので比較感があるようです。以前より良くなっているとか、具体的に誰がどう良くなったとか違いが分かるようですよ。3人ともライヴで僕達に小さなヒントやアイディアをくれていますよ。僕自身は、ただ彼らと演奏するだけではなく、攻撃的に仕掛けていきたいと心がけています。

―誰に聞いても「ブルーグラスの稲葉さん」と返ってくる。ファン・クラブを作った時に、違うんや!「稲葉ミュージックや!」という線を出したんですが、稲葉さんのファンは、ブルーグラスもカントリーも知らん人が圧倒的に多いので、稲葉さんの音楽スタイル、稲葉ミュージックに癒されて聴きに来てる人達が多いので、ブルーグラスにこだわらずにもっとはじけた方が良いのではと思いますが。

ブルーグラス・ランブルは、これまであえてブルーグラスにこだわってきました。僕は、ランブル以外のライヴやコンサートでは、ジャンルにこだわらず演奏していますからね。ただ、確かにブルーグラスに対して100回ピュアにやってきたので、101回からは少しモデルチェンジした方がいいのかもしれないと考えています。




―今年、1月の8周年記念公演のステージで、「埴生の宿」をブルーグラス・スタイルでやりましたね、「これや!」と思った。ブルーグラスを知らない人には、良く知っている曲が違って新鮮に聴こえて、「ブルーグラス・スタイル」に惹かれると思いますが。

ブルーグラス・スタイルは崩さずに、そのスタイルでどれだけパフォーマンスができるか、どれくらい新しいお客さんを呼び込めるかなど、100回の節目を迎えたので、同じことの繰り返しではなく、新たな発想で進化し、新しい切り口を見つけていきたいと思います。今まではブルーグラスを固守していたので「テネシー・ワルツ」や「カントリー・ロード」などはあえて歌ってきませんでした。ハンク・ウイリアムスの歌は歌ってきましたけど、101回目からは少し目線を変えて、選曲の幅を広げても良いかもしれませんね。

―稲葉さんは「いつも、これが最後のステージになるかもしれないという気持ちで演奏してます、歌ってます」と言っていますね。

いつも新鮮な気持ちで音楽をやりたいんです。「ケンタッキー・ワルツ」でも、前に歌った「ケンタッキー・ワルツ」でなく、今日初めて「ケンタッキー・ワルツ」を歌うような心構えで臨むようにしています。前と同じなら、いつも来てくれている人に飽きられますからね。へたしたらこれが最後、2度と来てもらえないかもしれないという、いい意味での緊張感を持ってやっています。そんな気持ちで、次につなげるように持っていきたいですね。

―当面の目標はなんでしょうか。

自分なりに頑張ってやっているので、正直、お客さんにはもっと来てほしいなあと思います。どういうふうに宣伝してとか、もっと来てもらうためには、どうしていったら良いかとかを考えていかないといけませんね。それと、またレコーディングをしたいですね。2003年に「ティアドロップ・オン・ナ・ローズ」をリリースして、4年になりますから、今年、ナッシュヴィルに行けたらツアーの1日をいただいてレコーディングしたいですね。次のCDのコンセプトは、「ディキシー・ドリーム」のコンセプトで、スティール・ギターを入れたカントリー・ヴァージョンもやりたいです。約1年前から東京での活動も始めまして、関東のミュージシャンとの交流も増えてきて楽しませてもらっています。東京での展開も是非、継続して頑張りたいと思っています。
これからもブルーグラス・ミュージックを広く一般の方々にも聴いていただけるように努力していきたいと思います。


Special thanks to Saburo Watanabe
MOONSHINER
B.O.M. Service, Ltd.

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